開催日:2026年9月16日(水)
勉強会:いい病院の勉強会
講師:溝口博重(株式会社AMI&I 代表取締役)
2026年9月16日、「いい病院の勉強会」にて、弊社代表の溝口博重が「日本の介護保険制度における現金給付をめぐる議論を国際比較の視点から整理してみよう!」をテーマに講演しました。
今回の講演では、日本の介護保険制度が掲げてきた「介護の社会化」という理念を振り返りながら、ドイツ、オランダ、スロベニア、韓国などの介護保障制度を比較し、日本の介護保険制度が抱える構造的な課題と今後の制度設計について解説しました。
日本の介護保険制度は、2000年の創設以来、家族だけに介護を背負わせず、社会全体で支えることを基本理念としてきました。
しかし、介護人材の不足が深刻化するなか、必要な介護サービスを十分に利用できず、結果として家族が無償で介護を担わざるを得ない状況も生じています。
講演では、現金給付と現物給付を組み合わせるドイツ、管理付き個人予算制度(PGB)を導入するオランダ、家族介護者の所得保障を制度化したスロベニア、供給困難地域などに限定して現金給付を認める韓国の制度を紹介しました。
各国の制度を比較することで、現金給付は一律に家族介護を促進する仕組みではなく、給付条件や支払管理、専門職によるモニタリングなどを組み合わせ、多様な介護ニーズに対応する制度として設計されていることを整理しました。
日本が現金給付を原則として採用してこなかった背景には、家族介護の固定化や介護サービス基盤の縮小、財政負担などへの懸念があります。
一方、制度創設から25年以上が経過し、介護サービスを提供する人材の確保そのものが大きな課題となっています。
こうした状況を踏まえ、講演では、現物サービスを基本としながら、管理付き個人予算や限定的な家族介護者支援を組み合わせる「日本版ハイブリッドモデル」を提案しました。
また、制度改革の成果を財政面だけで評価するのではなく、必要な介護を受けられなかった人の割合、家族の介護時間、介護離職、サービスの質など、多面的な指標によって検証する必要性についても解説しました。
今回の講演で中心的な問いとしたのは、「現物給付か、現金給付か」ではなく、「家族を無償の調整弁にせず、必要なケアをどう届けるか」 という点です。
介護保険制度の持続可能性を考えるうえでは、財源の確保だけでなく、実際に介護を提供する人材とサービス供給体制を維持することが欠かせません。
株式会社AMI&Iでは、今後も国内外の医療・介護制度の比較分析を通じて、日本の医療・介護政策や医療機関経営の課題について情報発信を続けてまいります。