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2024/8/27

教養としての戦争と医療と法#5 「クリミア戦争」 (1853~1856)

「教養としての戦争と医療と法」と題しまして、無料のオンライン勉強会を企画開催致します。
昨今の世界情勢などもありますが、何事も歴史があります。
今回、近代以降の国際情勢を学びながら、発見やら学びをしていければと思っております。

【講師】
緒方 健氏(鹿児島出身) 研究員
溝口博重氏(青森県出身) AMI&I代表取締役

【過去開催】
#1ウェストファリア条約~国家主権~   
#2絶対王政への反抗~フランス革命~   
#3ナポレオン戦争~欧州近代史の始まり~ 
#4イタリア統一戦争
#5クリミア戦争

第5回のテーマは「クリミア戦争」です。
クリミア戦争(1853-1856年)は、オスマン帝国、ロシア帝国、イギリス、フランス、サルデーニャ王国(イタリア)を含む主要な勢力が関与した戦争です。

【背景】
オスマン帝国の衰退が大きく関わってきます。
19世紀に入り、オスマン帝国は内部的な問題や外部からの圧力により弱体化していました。これに伴い、ヨーロッパ列強はバルカン半島や中東における影響力を拡大しようとした事が大きな要因です。

・ギリシア独立戦争
オスマン帝国の衰退+民族自決の流れ(フランス革命から流れですね)で発生。

・第一次エジプト・トルコ戦争
上記にともない、エジプトのムハンマド・アリーが宗主国のオスマンに領土をよこせと戦争を吹っ掛ける

・第二次エジプト・トルコ戦争
エジプトのムハンマド・アリーが宗主国のオスマンにまた戦争を吹っ掛ける。英仏介入で終了。

・クリミア戦争
ロシアVSオスマン +英仏サルディーニャ王国 連合軍
地中海の影響力をどの国が持つか、の戦争。このおかげで、イタリアは独立できた。

ロシアの南進政策。
ロシア帝国は黒海へのアクセスと地中海への進出を目指しており、その一環としてオスマン帝国からの領土獲得を狙っていました。露土戦争などで、一部領土獲得をしていましたが、特にクリミア半島やバルカン半島への影響力を強めることに執着しています。加えて、黒海からエーゲ海、地中海へと進出をしていきたいです。

宗教的・民族的対立
オスマン帝国内には多数のキリスト教徒が住んでおり、ロシアはこれらのキリスト教徒の保護を名目にオスマン帝国に圧力をかけました。この宗教的な対立が戦争の引き金の一つとなっています。同じ理由で、バルカン半島にも圧力を加えています。今回は、それに加えて、聖地管理権の譲渡問題もありました。

ヨーロッパ列強の思惑
イギリスは、ロシアの南下政策を阻止することで自国の利益を守ろうとしました。特に、地中海に対してロシアの影響力が増す事を懸念しており、ロシアの黒海~エーゲ海のアクセスは断固として拒否という姿勢です。フランスは珍しく、イギリスと強調路線。オーストリアも東地中海が荒れると困る、というスタンスです。

クリミア戦争は、戦争の世紀と言われる20世紀に向けての、初の近代戦争であり、様々な影響を与えています。

1. 近代看護と医療の発展
クリミア戦争中に活動したフローレンス・ナイチンゲールは、現代看護の基礎を築きました。彼女の活動により、戦場における衛生状態の改善や傷病兵の看護が大きく進歩しました。これにより、看護師の専門職化が進み、医療現場における看護の重要性が認識されるようになりました。

2. 国際法と戦争報道
クリミア戦争は、戦争報道の初期の例とされ、報道の自由とその影響力が重要視されるようになりました。また、戦時における中立国の地位や戦争捕虜の待遇に関する国際法の発展にも寄与しました。

3. 軍事技術と戦術の進化
この戦争は、鉄道や電信など新しい技術が戦争にどのように影響を与えるかを示しました。また、鉄製艦船やライフル銃などの新しい武器の導入が、後の戦争における戦術の変化をもたらしました。これにより、軍事技術の革新とそれに対する国の対応が重要視されるようになりました。

4. ロシアと西欧の関係
クリミア戦争の結果、ロシア帝国は国際的な孤立を経験し、内部改革を余儀なくされました。これにより、ロシアは近代化を進める一方で、西欧列強との関係も再構築する必要がありました。この歴史的な背景は、現在に至るまでロシアと西欧の関係に影響を与えています。

5. 国際政治におけるパワーバランスの変化
クリミア戦争後、オスマン帝国はしばらくの間安定を保ちましたが、依然として「ヨーロッパの病人」と称されるほど衰退していました。このような状態は、バルカン半島や中東の地域情勢に影響を与え、これが現代の国際政治にも波及しています。

6. クリミア地域の戦略的重要性
クリミア半島はその地理的な位置から、現在も戦略的に重要な地域とされています。2014年にはロシアがクリミアを併合し、この地域を巡る緊張が国際問題となりました。この背景には、クリミア戦争時の歴史的な文脈も影響しています。

これらの要素は、クリミア戦争が単なる19世紀の出来事に留まらず、現代の国際関係や軍事技術、医療の発展に至るまで広範な影響を与えたことを示しています。
クリミア戦争について、一緒に勉強しましょう。