「教養としての戦争と医療と法」と題しまして、無料のオンライン勉強会を毎月最終週の火曜19時より企画開催しています。
https://geopolitics-war.peatix.com/
ご興味頂けるようであれば、是非ご参加ください。
昨今の世界情勢などもありますが、何事も歴史があります。
近代以降の国際情勢を学びながら、発見やら学びをしていければと思っております。
【講師】
緒方 健氏(鹿児島出身) 研究員
溝口博重氏(青森県出身) AMI&I代表取締役
【過去開催の動画視聴もできます】
#1ウェストファリア条約~国家主権~
#2絶対王政への反抗~フランス革命~
#3ナポレオン戦争~欧州近代史の始まり~
#4イタリア統一戦争
#5クリミア戦争
#6アメリカ独立戦争
#7アメリカ南北戦争
#8アヘン戦争
#9普仏戦争
#10ビスマルク外交とベルリン会議
#11 日清戦争
#12 日露戦争
#13 第一次世界大戦 前夜 ~バルカン戦争~
#14 第一次世界大戦 1914-1915
#15 第一次世界大戦 1915-1916
#16 第一次世界大戦 1916-1917
#17 第一次世界大戦 1918年
#18 第一次世界大戦 1918年
「休戦協定が結ばれれば平和が戻る」──そう信じていた人々の前に現れたのは、荒廃し尽くした社会、飢餓と疫病、未曾有の政治的混乱、そして“新しい国際秩序の胎動”でした。
今回のテーマは第一次世界大戦・1919年。
ヴェルサイユ体制、国際連盟、スペインかぜ、戦争神経症、民族自決──
「戦争の終わり」が世界の再構築を迫り、制度・医療・倫理のあり方を根底から揺さぶった一年を、制度史の視点から読み解きます。
◆ なぜ1919年なのか?
1919年は、「平和」と「混乱」が同時に訪れた年です。
戦争が終わった瞬間に平和が訪れるわけではありませんでした。
むしろ1919年は、“戦争よりも難しい課題”──社会の再建、政治の立て直し、医療の立て直しが世界に突きつけられた年と言えます。
そしてこの年に登場した構想・理念の多くが、100年以上経った今日の国際秩序、国際法、人道医療の基盤を形づくっています。
◆ 今回のポイント(1919年版)
■ 崩れゆく帝国と、新しい国際秩序
──帝国の死、民族自決、そしてヴェルサイユ体制
・ドイツ帝国・オーストリア=ハンガリー帝国・オスマン帝国・ロシア帝国が相次ぎ崩壊
・民族自決は「理念」として機能しつつも、現実には“新たな火種”にも
・賠償、領土問題、軍縮──条件をめぐる交渉が世界を分断
・ヴェルサイユ条約は平和の礎となる一方、“次の戦争の伏線”も内包する
1919年は、「戦争をどう終わらせるか」ではなく、「戦争の後、世界をどう設計するか」が問われた年でした。
■ 国際法の再構築──理念と現実のギャップ
無制限潜水艦、毒ガス、無差別攻撃──
戦時国際法が破られ続けた1914–18年を受け、国際社会は新しい秩序づくりに動き出します。
・国際連盟の設立(史上初の“集団安全保障”機構)
・軍備制限、紛争調停、国際司法制度などの構想
・しかし米国議会は加盟を拒否し、理想と現実の乖離が露呈
国際法は1919年に“再生”の第一歩を踏み出しますが、同時にその限界も示されました。
■ 戦場医療は大幅に進化した。しかし──戦後の医療は新たな試練に直面する
塹壕戦の極限状況が押し上げた医療は、1919年に“社会的医療”へと転換します。
・輸血技術の本格運用、X線診断の普及
・感染症管理(創傷ケア・抗菌的処置)の進歩
・前線救護のシステム化(トリアージ/前線外科ユニット)
しかし1919年に医療を最も苦しめたのは、“スペインかぜ”という世界的パンデミックでした。
・世界で5,000万以上が死亡
・戦争で弱った社会インフラが医療崩壊を拡大
・国家は感染力と致死率の前に無力化し、公衆衛生体制の脆弱さが露呈
1919年は、“現代公衆衛生”が本格的に動き出す出発点でもありました。
■ 戦争神経症(シェルショック)と社会の分断
戦争神経症を抱えた帰還兵は、1919年の社会が直面した最大級の課題のひとつです。
・PTSD概念の前史としての「シェルショック」
・医療が追いつかない精神的外傷
・帰還後の社会復帰政策の不備
・“英雄”と“負担者”という二重の視線が兵士を苦しめる
1919年は、「心の傷をどう扱うか」という現代医療・福祉の根本問題が立ち上がった年と言えます。
■ 1919年の戦場──戦闘は終わっても、暴力は終わらなかった
実際には「戦争は1918年11月11日に終わった」わけではありません。
1919年には、次のような戦闘・革命・紛争が続いています。
・ドイツ革命、大規模ストライキ、フライコールの武装蜂起
・ハンガリー革命(クン政権)とその崩壊
・ロシア内戦の激化──白軍・赤軍・各民族勢力の入り乱れる戦争
・ポーランド=ソ連戦争の勃発
・中東地域での反乱・民族運動の連鎖
「戦争の終わり」が、必ずしも暴力の終わりではない
──1919年はその事実を世界が目撃した年でした。
◆ この講座が問うもの
1919年の歴史は、次の問いを私たちに突きつけます。
戦争が終わっても、制度はすぐには再建されない。
法は万能ではなく、医療だけでも社会は救えない。
しかしその一方で──国際連盟、公衆衛生、精神医療、社会保障、民族自決という、“現代世界の基礎”が1919年に芽吹いたことも、また歴史の真実です。
制度が崩れた世界で何が起き、人はどう希望を見出したのか。
その答えを、歴史の構造から読み解いていきます。
◆ こんな方におすすめです
・歴史を「知識」ではなく「視座」として学びたい方
・国際法・外交・医療・倫理の交差点を理解したい方
・第一次世界大戦後の秩序形成を深く学びたい方
・現代の国際秩序やパンデミック政策の起源を知りたい方
・制度が崩れた後の“再構築”の困難さを理解したい方