【勉強会開催報告】
「ベルギーの医療制度を徹底解説 ~家庭医制度を中心に見る先進国型ヘルスケアの実際と示唆~」
2025年3月18日、弊社主催にて、ベルギーの医療制度に焦点を当てた勉強会を開催いたしました。EU本部を擁する国際都市ブリュッセルを抱え、医療水準の高さでも知られるベルギー。同国の医療制度は、国民皆保険制度の下で、家庭医制度を中心とした地域医療ネットワークが強固に機能している点で注目されています。
今回の勉強会では、ベルギーの医療制度の全体像を紹介するとともに、特に“家庭医”というゲートキーパーの仕組みがいかに制度全体を支えているかに焦点を当て、今後の日本における地域医療の在り方への示唆を探りました。
勉強会の内容
Ⅰ.ベルギーの医療制度の概要
①公的保険制度と医療費の仕組み
ベルギーでは公的健康保険(健康保険)への加入が義務付けられており、国民は原則として医療費の75%を補償されています。自己負担はあるものの、払い戻し制度が整っており、比較的安価で高品質な医療を受けられる仕組みとなっています。
②医療機関と職種の役割分担
病院は公立・私立の区別なく、医師はフリーランスとして働く形が多く見られます。
特に一次医療の現場では、家庭医(General Practitioner)が初期診療を担い、専門医への紹介を通じて患者の医療アクセスを最適化しています。
Ⅱ.ベルギーにおける家庭医制度の実態
①家庭医の役割と位置づけ
ベルギーでは、家庭医がすべての医療の“入口”として機能しており、患者の健康情報を一元的に管理。慢性疾患管理や予防医療にも積極的に関与しており、個別最適化された医療サービスを提供しています。
また北部と南部では制度設計が異なる事が特徴です。
②制度としての支援体制
家庭医の活動は診療報酬だけでなく、包括的なITシステム(電子健康記録)や地域医療チームとの連携によって支えられています。
患者はかかりつけ医を登録することで、医療費の払い戻し率が上がるなど、制度的なインセンティブも整っています。
Ⅲ.医療アクセスと保険制度の連携
①自由な医療機関選択と費用負担
患者は基本的に自由に医師や医療機関を選ぶことができますが、家庭医の紹介を経た場合の方が費用面で有利になるなど、制度設計が巧妙です。
②保険基金(ミュチュエル)との関係
複数の健康保険基金が存在し、国民は自身で選択可能。いずれの基金も法定サービスの提供が義務付けられており、安心して医療を受けられる体制が整っています。
Ⅳ.ベルギーの医療制度から読み解く日本への示唆
①地域医療構想との共通点と相違点
日本でも「かかりつけ医」制度の強化が進められていますが、ベルギーのような家庭医中心の仕組みとは運用面で大きな違いがあります。今回の勉強会ではその違いを可視化し、今後の制度設計へのヒントを探りました。
②ICTの活用と情報共有の仕組み
ベルギーでは、医師間の情報共有、薬剤情報、患者の既往歴などが全国規模でデジタル連携されています。日本におけるPHR(Personal Health Record)普及の観点からも、非常に参考になる事例が紹介されました。
ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。今後も、世界各国の医療制度やヘルステックの先進事例を共有することで、日本の医療の未来をともに考える場を提供してまいります。