【実施報告書】海外医療制度勉強会(ドイツ編)
2025年6月19日、海外医療制度に関する勉強会を実施し、今回は「ドイツ連邦共和国」の医療制度をテーマに取り上げました。
講師は弊社代表の溝口博重が勤めました。
参加者は医療従事者、行政関係者、医療関連ビジネスに関心を持つ方々など計30名でした。
勉強会は以下の構成で進行しました。第1章では、ドイツの国家概要、連邦制による医療行政の分権構造、ならびに地域格差と都市集中の状況について紹介しました。
第2章ではドイツの医療制度の歴史的背景として、19世紀末のビスマルク制度の導入、戦後の社会保険医療の再編成、そして近年の医療改革法(Gesundheitsreform)に至る流れを概観しました。
第3章では、ドイツの公的医療保険(GKV:Gesetzliche Krankenversicherung)と私的医療保険(PKV:Private Krankenversicherung)の二本立て構造と、加入者の選択権・保険者間競争・リスク構造補正制度について説明しました。
第4章では、医療提供体制を以下の4つの小章(α〜δ)に分けて解説しました。
α:家庭医(Hausarzt)制度と、医療機関への自由アクセスの両立
β:大学病院・公立病院・私立病院・慈善病院など多様な運営主体の役割
γ:薬局(Apotheke)の独立性と調剤報酬体系、薬剤師のカウンセリング義務
δ:電子カルテ導入(ePA)やデジタル処方箋(eRezept)を含むデジタル化戦略(Gesundheitsdatenstrategie)
第5章では、Quality/Accessibility/Cost(QAC)の観点からドイツの医療制度を評価しました。高い医療技術とアクセスの良さ、保険料の抑制といった強みがある一方、待機時間の長期化や地方部での人材不足、制度複雑化による保険者負担増などの課題を検討しました。
第6章では、医師養成制度(大学+実務研修)、診療報酬制度(EBMによる点数制)、かかりつけ医モデルの推進、遠隔医療の規制緩和、さらにはドイツにおける高齢化と介護制度との統合的アプローチについても整理しました。
最後に質疑応答とまとめの時間を設け、参加者同士のディスカッションも活発に行われました。
「医療保険の選択肢がある点が日本と大きく異なる」「制度設計の多様性と政策の柔軟さが印象的」といった感想が寄せられました。
来月は、オランダの医療制度をテーマに、引き続き勉強会を開催する予定です。