弊社では、日本の医療制度を相対化し、将来の制度設計や医療機関経営の視点を広げることを目的として、「海外医療制度勉強会」を継続的に開催しています。
2026年2月19日に開催した勉強会では、株式会社AMI&I 代表取締役 溝口博重が登壇し、「コロンビアの医療制度」をテーマに解説しました。
今回取り上げたのは、1993年の医療制度改革によって導入された、保険者(EPS)を中心とした医療制度モデルです。
コロンビアの医療制度の最大の特徴は、公的医療を国家が直接運営するのではなく、保険者であるEPS(Entidad Promotora de Salud)を中心に医療提供を組み立てている点にあります。EPSは医療保険の運営主体であり、加入者の保険管理、医療機関との契約、医療サービスの調整などを担う役割を持っています。
勉強会ではまず、コロンビアの制度が「国が直接医療を提供するモデル」でも「完全な民間医療モデル」でもなく、保険者を中心とした管理型競争(managed competition)の制度設計である点を整理しました。EPSは複数存在し、国民は保険者を選択することができる一方で、医療サービスの内容や基本給付は制度として統一されています。
また、コロンビアの医療制度では、所得階層に応じて異なる加入制度が設けられている点も特徴です。給与所得者などは拠出型制度(contributory regime)に加入し、低所得層については政府財源を中心とした補助制度(subsidized regime)によって医療保障が提供されています。この二層構造により、所得状況にかかわらず医療アクセスを確保する仕組みが構築されています。
さらに、医療提供体制については、EPSが医療機関と契約を結び、加入者の医療サービスを手配する仕組みとなっています。これにより、保険者が医療費や医療利用を一定程度コントロールする構造が制度として組み込まれている点が、日本の医療制度との大きな違いとして紹介されました。
講義では、こうした制度設計の背景として、1990年代の社会保障改革や医療アクセスの格差問題への対応など、制度改革の歴史的経緯についても説明が行われました。
参加者からは、
「保険者が医療提供を調整する構造が、日本とは大きく異なる」
「医療制度を市場メカニズムと制度設計で組み合わせている点が興味深い」
といった声が寄せられ、海外制度と日本制度の比較を通じた活発な議論が行われました。
本勉強会を通じて、医療制度は単に医療機関の配置や財源の問題ではなく、保険者・医療提供者・政府の役割分担をどのように設計するかという制度構造の問題であることが改めて示されました。コロンビアのEPSモデルは、保険者を中心に医療制度を組み立てる一つの制度設計として、日本の医療制度を考える上でも示唆を与える事例といえます。
弊社では今後も、こうした海外事例を通じた構造的な比較分析を継続してまいります。