弊社では、日本の医療制度を相対化し、将来の制度設計や医療機関経営の視点を広げることを目的として、「海外医療制度勉強会」を継続的に開催しています。
2026年1月15日に開催した勉強会では、株式会社AMI&I 代表取締役 溝口博重が登壇し、「コスタリカの医療制度」をテーマに解説しました。
今回取り上げたのは、中米コスタリカにおける公的医療制度の中核であるCaja Costarricense de Seguro Social(CCSS)、通称「カハ」と呼ばれる社会保障機関です。
コスタリカの医療制度の最大の特徴は、公的保険制度と医療提供体制がCCSSという単一の制度主体に統合されている点にあります。CCSSは1941年に設立された社会保障機関であり、医療保険の運営と医療提供の双方を担う組織です。現在では、国民の大部分がCCSSの医療保障の対象となり、全国の病院・診療所・地域医療拠点を通じて医療サービスが提供されています。
勉強会ではまず、CCSSが単なる保険者ではなく、保険運営・医療提供・人材雇用・医療インフラ整備を一体的に担う統合型の制度主体である点を整理しました。医師や医療スタッフはCCSSのもとで雇用され、一次医療から高度医療までを一体的に運営する構造となっています。この制度設計により、医療アクセスの確保と地域医療の均衡を制度として実装している点が特徴です。
また、コスタリカ医療制度の重要な特徴として、一次医療(プライマリ・ケア)を重視した地域医療体制が挙げられます。地域ごとに配置されたEBAIS(基本包括医療チーム)と呼ばれるプライマリケアユニットが、住民の健康管理や予防医療、慢性疾患管理の役割を担い、必要に応じて上位医療機関へ紹介する仕組みが整備されています。これにより、医療資源の効率的な配分と地域医療の持続性が確保されています。
さらに、コスタリカでは医療制度が社会保障制度の一部として位置づけられており、保険財源は労使拠出と政府負担によって構成されています。この仕組みにより、比較的限られた医療財源の中でも、高い健康指標(平均寿命や乳児死亡率など)を達成している点が国際的にも注目されています。
参加者からは、
「保険と医療提供を一体で設計している点が、日本の制度とは大きく異なる」
「地域医療を制度として設計している点が非常に興味深い」
といった声が多く寄せられました。
本勉強会を通じて、医療制度の持続性は医療機関単位の努力だけではなく、制度主体の設計やプライマリケアの位置づけといった構造的要素に大きく左右されることが改めて示されました。コスタリカのCCSSモデルは、医療制度を社会保障として統合的に設計するアプローチの一例として、日本の医療制度を考える上でも多くの示唆を与えるものといえます。
弊社では今後も、こうした海外事例を通じた構造的な比較分析を継続してまいります。