弊社では、医療制度および診療報酬改定を、医療機関経営に直結する外部環境として捉え、継続的な議論と情報発信を行っています。
2026年3月14日に実施した本対談の第2回では、医療ジャーナリストの村上和巳氏と、株式会社AMI&I 代表取締役 溝口博重が登壇し、
「2026年度診療報酬改定の背景にある政治構造と政策意図」をテーマに議論を行いました。
動画は下記より視聴可能です
【2026年度診療報酬改定】加速する医療再編、国が経営に踏み込む時代へ | 解説 | Medical Tribune
本回ではまず、今回の診療報酬改定を理解する前提として、現在の政治環境が整理されました。
衆議院選挙において自民党が単独で316議席を獲得したことにより、政権は極めて強い推進力を持つ状況となっています。
参議院では過半数に届いていないものの、今後数年間は大きな政権交代リスクが低く、政策は中長期的に実行される前提で捉える必要があります。
その上で、高市政権の政策思想は、
・経済安全保障
・デジタル
・健康・医療安全保障
の3軸で整理され、
「基盤リスクを管理しつつ、デジタルを活用して成長を実現する」
という方向性にあることが示されました。
医療政策においても、医薬品サプライチェーンの強化や、ゲノム・認知症領域の産業化など、
従来の医療提供体制の枠を超えた政策展開が進められています。
今回の議論の中核となったのが、新たな地域医療構想における「目的の転換」です。
従来の地域医療構想が「病床機能の分化」を主眼としていたのに対し、
新構想では、
「病院機能そのものの再編」
へと大きくシフトしています。
背景には、2040年に向けた高齢化の進展と人口減少という構造変化があり、
・外来
・在宅
・介護
・救急
を地域単位で一体的に再設計する必要性が明確に打ち出されています。
また、人材不足への対応や医療DXの推進も制度設計の中に組み込まれており、
単なる機能分化ではなく、「医療提供体制全体の再構築」が政策テーマとなっている点が強調されました。
今回の改定における「回復期」から「包括期」への概念転換も、
この流れと整合的な動きとして位置付けられます。
溝口からは、今回の改定を
「地域医療の第三世代」
と捉える視点が提示されました。
・第一世代:医師個人の裁量による医療提供と報酬
・第二世代:病棟機能単位でのコントロール(回復期・地域包括ケア等)
・第三世代:病院経営そのものへの政策介入
すなわち、診療報酬はもはや個別行為や病棟機能の評価にとどまらず、
医療機関の経営構造そのものを変えるための政策ツールへと進化している、という整理です。
この背景には、国民皆保険を維持するための効率化圧力があり、
従来型の経営モデルでは持続が困難であるという明確なメッセージが込められています。
さらに、与党構成として自民党と日本維新の会が連携している点も重要な論点として挙げられました。
両者に共通する政策として、
・病床の適正化および医療機関の再編
・かかりつけ医機能の強化
・医療DXの推進
があり、これらは今後、強い政策ドライブのもとで進展する可能性が高いと整理されました。
また、歴史的に見ると、1973年以降続いてきた「給付拡大・負担軽減」の流れに対し、
現在はその逆方向への転換が進んでいる点も指摘されました。
病床適正化に対しては補正予算を含めた財源措置も講じられており、
政治・制度・財政の三位一体で進むこの流れは不可逆的である
という認識が共有されました。
本対談は全3回構成となっており、
第3回では、こうした政策環境を踏まえた医療機関の具体的対応について、
さらに踏み込んだ議論を行う予定です。
弊社では今後も、制度と経営を接続する視点から、
実務に資する情報発信を継続してまいります。