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2026/10/28

日経ヘルスケア主催「中核人材育成プログラム」第6回を開催しました

― 官僚制の逆機能/システムの逆機能 ―

2026年10月28日、日経ヘルスケア「中核人材育成プログラム」の第6回研修を開催しました。

今回のテーマは「官僚制の逆機能/システムの逆機能」です。

医療機関が安定して業務を行うためには、ルールやマニュアル、役割分担、承認手続きなどの仕組みが欠かせません。

一方で、組織が長く運営されるほど、

「なぜ、この確認をしているのか分からない」
「昔からあるので、この書類を書いている」
「このケースでも必ず上司の承認が必要」
「システムを入れたのに、紙の仕事も残っている」

といった業務も増えていきます。

本来、仕事を円滑にするために作られたルールや仕組みが、いつの間にか仕事そのものを複雑にし、現場の負担を増やしてしまう。

これが今回取り上げた「官僚制の逆機能」です。

 

ルールが悪いのではなく、「目的とのズレ」が問題

今回の研修では、ロバート・K・マートンが論じた「官僚制の逆機能」をもとに、医療機関で起こりやすい具体的な事例を取り上げました。

大切なのは、「ルールが多い=悪い」と考えることではありません。

医療は安全性や品質を確保する必要があり、一定の標準化や確認手順は不可欠です。

問題になるのは、本来は目的を達成するための手段だったルールを守ること自体が目的になってしまうことです。

例えば、

退院日がすでに決まっているのに、毎回医師の最終確認を待たなければ退院手続きが進まない。

予約枠が空いているにもかかわらず、受付で変更できず、看護師や医師への確認が必要になる。

同じ情報を電子カルテ、Excel、紙の帳票へ何度も入力する。

会議で決定した内容を、別の会議でもう一度審議する。

こうした業務は、一つひとつを見ると安全性や情報共有を目的として作られています。しかし、それが積み重なることで、患者さんの待ち時間や職員の事務負担を増やし、組織全体の生産性を低下させることがあります。

 

「単純化・分業化・標準化」で仕事を見直す

研修では、こうした業務を改善する方法として、第5回でも扱った単純化・分業化・標準化という三つの視点を使いました。

まず現在の業務を細かく分解し、

「そもそも、この作業は必要なのか」

「この仕事を、この職種が行う必要があるのか」

「毎回誰かに確認しなくても、判断基準を決められないか」

と考えていきます。

今回取り上げた予約変更のケースでは、受付で完結できるもの、責任者への確認が必要なもの、医療職へ引き継ぐものに判断を分類しました。

すべてを現場の裁量に任せるのではありません。

どこまでは現場で判断でき、どこから専門職や責任者に引き継ぐのかをあらかじめ設計する。

これによって、判断の質を維持しながら、不要な確認や待ち時間を減らしていきます。

 

医療DXにも「逆機能」は起こる

後半では、「システムの逆機能」についても取り上げました。

電子カルテ、Web予約、オンライン問診、RPA、AI、BIツールなど、医療機関にもさまざまなデジタル技術が導入されています。

しかし、システムを導入しただけで業務が効率化するとは限りません。

電子化したにもかかわらず紙への記録が残る。

システム間でデータが連携されず、転記作業が発生する。

システムに合わせるために、かえって確認作業が増える。

こうしたケースでは、「システムが悪い」と結論づけるだけでは改善につながりません。

今回の研修では、

システムそのものの問題なのか。
業務設計の問題なのか。
組織運用の問題なのか。

を分けて考えることを説明しました。

医療DXは、単なるIT導入ではありません。

テクノロジーを使って仕事の流れをどう再設計するのかという、マネジメントの問題でもあります。

 

中核人材の仕事は「仕組みを守ること」だけではない

今回、最も伝えたかったことの一つが、一度作った仕組みも定期的に見直さなければならないということです。

組織では、新しいルールを作ることは比較的簡単です。

インシデントが起こればチェック項目が増え、問題が起これば承認プロセスが追加されます。

しかし、一度作ったルールを廃止する仕組みは、ほとんどありません。

その結果、組織にはルールや確認作業が蓄積していきます。

そこで今回、参加者には、自部署にある「目的が分からなくなっている業務」「なくしても困らないかもしれないルール」「重複している確認」などを探してもらうワークも行いました。

そして、見つかった業務を、

維持する
簡略化する
廃止する

の三つに分け、小さな改善プロジェクトとして実行していく方法を紹介しました。

中核人材に求められるのは、与えられた仕組みを正確に運用することだけではありません。

「この仕事は、本当に今も必要なのか」

「もっと簡単にできないか」

「なぜ、このルールが存在しているのか」

と問い直し、現場から改善を進められることも重要な役割です。

小さな業務改善を自分たちで実現し、その成果を現場へ返していく。

こうした成功体験の積み重ねが、スタッフの自己効力感を高め、自ら課題を見つけ、自ら改善できる組織づくりにつながると考えています。

今回の結論は、シンプルです。

 

マネジメントにも、定期的なメンテナンスが必要です。

作ったルールを守るだけではなく、目的に照らして仕組みそのものを見直す。

中核人材がその役割を担えるようになることが、自走する組織への一歩になります。

次回、第7回は「リーダーシップとフォロワーシップ」をテーマに、組織を動かすための「人の働きかけ」について考えていきます。

▶ 日経ヘルスケア「中核人材育成プログラム」
https://medical.nikkeibp.co.jp/all/info/about/method26/