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2026/9/30

日経ヘルスケア主催「中核人材育成プログラム」第4回を開催しました

― 組織コミュニケーション:情報を伝えるだけでは組織は動かない ―

2026年9月30日、日経ヘルスケア「中核人材育成プログラム」の第4回研修を開催しました。

今回のテーマは「組織コミュニケーション」です。

これまでの研修では、会議の運営や共通目的・目標設定を通じて、組織が協働するための基本的な仕組みを学んできました。

しかし、どれだけ優れた目標を設定しても、その目的が現場に伝わり、具体的な行動につながらなければ、組織は動きません。

今回の研修では、一般的な「話し方」や「聞き方」といった個人のコミュニケーションスキルではなく、組織の中で情報・目的・判断・認識を適切に行き来させるための仕組みに焦点を当てました。

 

医療機関は、コミュニケーションが不足しているのか?

医療機関には、申し送り、カンファレンス、朝礼、会議、診療記録、電話、チャットなど、数多くのコミュニケーションの機会があります。

それにもかかわらず、「伝えたはずなのに伝わっていない」「部署によって認識が違う」「方針を説明したのに現場が動かない」といった問題が生じます。

これは、コミュニケーションの量だけでは説明できません。

実際に、医療現場を対象とした研究でも、専門職ごとの認識の違いや、組織内の権限関係、職種間の壁などが、情報共有や協働を妨げる要因として指摘されています。

そこで今回の研修では、組織コミュニケーションを三つの方向に分け、それぞれの役割と改善方法について解説しました。

 

① 浸透的コミュニケーション:上から下へ、目的を行動に変える

一つ目は、経営層や管理職が示した方針・目標を、現場の具体的な行動につなげる「浸透的コミュニケーション」です。

例えば、病院が「退院支援を早期から開始する」という方針を決定したとします。

会議で説明し、各部署に通知したとしても、それだけでは現場の仕事は変わりません。

なぜ早期の退院支援が必要なのか。誰が、いつ、何を行うのか。どのような状態を目指しているのか。

こうした内容まで伝えることで、初めて組織の目標が現場の行動につながります。

今回の研修では、そのための手順を「焦点化」「意味づけ」「実行化」の三段階に整理しました。

「伝えたこと」と「相手が理解し、行動できること」は違います。

部下が動かない原因を本人の意欲や能力の問題として考える前に、上司の意図が行動に変換されるまでの伝達過程を見直すことが大切です。

 

② 提言的コミュニケーション:下から上へ、現場の声を組織の判断につなげる

二つ目は、現場で発生している問題や改善提案を、管理職や経営層の判断につなげる「提言的コミュニケーション」です。

医療現場では、実際に業務を担当する職員ほど、仕事の問題点や改善のヒントを持っていることがあります。

しかし、「問題があれば言ってください」と伝えるだけで、現場から必要な情報が集まるとは限りません。

過去に意見を出しても何も変わらなかった経験があれば、職員は「言っても無駄だ」と考えるようになります。

また、上司や他職種との関係によって、懸念や異論を口にしにくい場合もあります。

そこで研修では、提言的コミュニケーションを「発見」「表出」「応答」の三段階に整理しました。

管理職や中核人材が自ら現場の情報を取りに行くこと。職員が安心して意見を出せる状態をつくること。そして、上がってきた意見に対して、組織として判断し、その結果を現場へ返すことです。

現場から意見を集めるだけでなく、その意見をどう扱ったのかを返すこと。

この循環がなければ、職員は次第に意見を出さなくなり、組織の問題発見能力も低下してしまいます。

自走する組織をつくるうえで、特に重視したいコミュニケーションです。

 

③ 協創的コミュニケーション:横から横へ、異なる専門職の仕事をつなぐ

三つ目は、職種や部署を横断して協働を実現する「協創的コミュニケーション」です。

医療機関は、医師、看護師、リハビリテーション専門職、薬剤師、医療ソーシャルワーカー、事務職員など、さまざまな専門職によって成り立っています。

それぞれの専門職には、異なる役割や判断基準があります。

例えば、患者さんの退院を考える場合、医師は医学的な安定性を重視し、看護師は退院後の生活や家族の受け入れ状況を確認します。リハビリテーション専門職は身体機能や生活動作を評価し、医療ソーシャルワーカーは退院先や利用できる制度を調整します。

それぞれが自分の役割を正しく果たしていても、仕事がうまくつながっていなければ、退院調整は進みません。

今回の研修では、こうした問題に対して「相互理解」「目的統合」「協働調整」という三段階を紹介しました。

まず、相手の役割や専門性、優先順位、制約を理解すること。次に、職種ごとに異なる目標を、患者さんにとっての共通のゴールにつなげること。そして、誰が、何を、いつ、どの条件で、誰に伝えるのかを具体的に決めることです。

多職種連携は、単に仲良くすることでも、会議や情報交換を増やすことでもありません。

異なる専門職の仕事を、一つの目的に向けて機能させることが求められます。

 

コミュニケーションは、設計して改善できるスキル

今回の研修では、三つの方向のコミュニケーションについて、それぞれ現場で確認できるチェックツールも紹介しました。

上から下へのコミュニケーションでは、目的や優先順位を現場の行動につなげられているか。

下から上へのコミュニケーションでは、現場の問題や提案を組織の意思決定に反映できているか。

横から横へのコミュニケーションでは、異なる専門職の認識や仕事の進め方を調整できているか。

参加者には、自分自身のコミュニケーションを振り返り、改善したい部分を一つ選んで、実際の業務で試してもらうことを課題としました。

コミュニケーションは、生まれ持った性格や個人の話術だけで決まるものではありません。

目的と方法を理解し、日々の仕事の中で意識して実践することで、改善できるマネジメントスキルです。

 

中核人材が組織コミュニケーションの中心になる

本プログラムが目指しているのは、院長や管理職からの指示を待つのではなく、現場から自発的に課題を発見し、改善を進められる組織づくりです。

そのためには、経営層の方針が現場に伝わるだけでなく、現場の意見や情報が経営層へ届き、部署間でも協働できる状態が求められます。

今回学んだ三つのコミュニケーションは、そのための基本的な仕組みになります。

「人を変える」のではなく、「組織が自走する仕組み」をつくる。

中核人材が組織コミュニケーションを担い、目的・情報・判断を組織全体につなげることが、自走する組織への一歩となります。

次回、第5回は「マネジメント」をテーマに、仕事をどのように設計すれば、特定の職員の能力や経験に依存せず、安定して成果を生み出せるのかを考えます。


日経ヘルスケア「中核人材育成プログラム」
https://medical.nikkeibp.co.jp/all/info/about/method26/