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2026/10/14

日経ヘルスケア「中核人材育成プログラム」第5回を開催しました

― マネジメントとは、仕事を設計することである ―

2026年10月14日、日経ヘルスケア「中核人材育成プログラム」の第5回研修を開催しました。

今回のテーマは「マネジメント」です。

これまでの研修では、会議の運営、目標設定、組織コミュニケーションなど、組織を動かすための基本的なスキルを学んできました。

第5回では、これらのスキルの土台となる「マネジメント」そのものを取り上げました。

一般的に、マネジメントというと、職員への指示や進捗管理、部下の育成などをイメージすることが多いと思います。

しかし、今回の研修で重視したのは「人の頑張りに依存するのではなく、仕組みによって組織の成果を生み出す」という考え方です。

マネジメント100年の歴史から学ぶ

研修の前半では、1900年代初頭から現在までのマネジメント理論の歴史を振り返りました。

テイラーの科学的管理法、バーナードの組織論、ドラッカーの目標による管理(MBO)、組織学習、業務改革、そして近年のデジタル技術やAIの活用まで、マネジメントの考え方は時代とともに発展してきました。

その一方で、一貫している問いがあります。

「どうすれば、組織は安定して成果を生み出せるのか」

優秀な職員が頑張れば成果が出るという状態では、その人が休職・異動・退職したとき、業務が立ち行かなくなります。

組織として安定した成果を生み出すためには、個人の能力や経験を、誰もが活用できる仕組みに転換することが求められます。

 

成果が出ない理由を「人の問題」だけにしない

今回の研修では、ドナベディアンモデルを応用し、組織の「構造」「過程」「結果」を分けて考える方法も解説しました。

構造とは、人員・設備・予算・情報などの経営資源や組織の仕組みです。

過程とは、それらを活用して仕事を進めるマネジメントです。

例えば、看護師の残業が減らない場合、その原因は看護師長の業務管理能力にあるのでしょうか。

そもそも患者数に対して必要な人員が不足しているのであれば、それは構造の問題です。

一方、人員が確保されていても、業務分担や情報共有が適切に行われていなければ、マネジメントの問題と考えられます。

成果が出ていないことは、必ずしもマネジメントが悪いことを意味しません。

中核人材には、目の前の問題をすぐに個人の能力や意識の問題として捉えるのではなく、組織の構造と仕事の進め方を分けて考える視点が求められます。

 

マネジメントの基本は「単純化・分業化・標準化」

研修の中心となったのが、業務設計の基本となる三つの考え方です。

単純化とは、仕事を細かく分解し、不要な作業や複雑な判断を減らすこと。

分業化とは、仕事を適切に分担し、誰が何を担当するのかを明確にすること。

標準化とは、仕事の進め方を統一し、担当者が変わっても一定の品質で業務を遂行できるようにすることです。

この三つを組み合わせることで、業務の「再現性」を高めることができます。

研修では、手術器械の準備、外来の受付・会計業務、病棟の物品管理、退院支援など、医療現場で起こりやすい業務を事例として取り上げました。

例えば、手術器械の準備を熟練職員の経験に依存するのではなく、術式ごとのパッケージとして標準化する。

こうすることで、担当者による作業のばらつきを減らし、安定した業務運営につなげることができます。

ただし、すべてをマニュアル化すればよいわけではありません。

標準化すべき部分と、専門職としての判断や創意工夫を認める部分を明確に分けることも、マネジメントの役割です。

 

「その場の対応」から「再発を防ぐ仕組み」へ

後半では、マネジメントにおける「一次的対応」と「二次的対応」を取り上げました。

一次的対応とは、現場で発生した問題を、その場で解決することです。

例えば、必要な物品が不足した際に、職員が別の部署から借りてくることも一次的対応に当たります。

一方、二次的対応とは、なぜ物品が不足したのかを確認し、在庫管理や補充ルールを見直して、同じ問題が繰り返されないようにすることです。

医療現場では、患者さんへの対応が最優先されるため、一次的対応は欠かせません。

しかし、その場の問題を解決するだけでは、翌日も同じ問題が発生するかもしれません。

優秀な職員が毎回問題を解決する組織から、問題そのものが繰り返されにくい組織へ。

この転換こそ、今回の研修で伝えたかった大きなポイントです。

 

中核人材が担う「自走する組織づくり」

本プログラムでは、知識を学ぶだけでなく、実際の業務で試し、小さな成功体験を積み重ねることを重視しています。

今回も、参加者が自部署の業務を振り返り、単純化・分業化・標準化の三つの視点から改善策を考えられるよう、具体的な事例や業務設計ツールを紹介しました。

中核人材に求められるのは、目の前の仕事を上手に処理する能力だけではありません。

日々の業務の中から課題を発見し、関係者と協力しながら仕事の進め方を見直し、改善した仕組みを組織に定着させていくことです。

そのために、これまで学んできた会議、目標設定、コミュニケーションのスキルが役立ちます。

「人を変える」のではなく、「組織が自走する仕組み」をつくる。

今回のマネジメント研修は、そのための基本的な考え方と実践方法を学ぶ機会となりました。

次回、第6回は「官僚制の逆機能/システムの逆機能」をテーマに、良かれと思って作ったルールや仕組みが、かえって組織の生産性を低下させてしまう問題について考えます。

マネジメントは、仕組みを作って終わりではありません。その仕組みが本来の目的を果たしているかを確認し、必要に応じて見直していくことも大切です。


日経ヘルスケア「中核人材育成プログラム」

講師:株式会社AMI&I 代表取締役 溝口博重

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